本日は地味に悩ましいビューエルのリアブレーキのマスターシリンダーの保守についてのお話。
リアブレーキはフロントブレーキよりも今一つ注目されることが少なく、更にリアブレーキの中でもキャリパーやローターと比較するとマスターシリンダーは輪を掛けて地味な存在。
そんな地味で目立たない存在の部品ですが、もちろん無くてはならない最重要部品の一つ。
Buell社はとっくの昔に無くなっちゃったけど、今後もこの重要な部品はきちんと維持することが出来るのでしょうか?
ビューエルのリアブレーキマスターはニッシン製
こちらがビューエルで純正採用されているリアブレーキのマスターシリンダー。確かX1のだったと思います。
年式によって微妙な違いはあるものの、ビューエルのリアマスターシリンダーはXL系・XB系共に基本的には同じ物がついているはず。
製造元はニッシン。ニッシン(日進工業)は長野県に本社がある、日本の企業ですよ。
このマスターシリンダーを分解するとこんな感じ。なんともまぁ、シンプルな構造なもんです。
ビューエルのリアマスターシリンダー
製造元 | ニッシン |
ピストンサイズ | 1/2 |
取り付けピッチ | 40mm |
リザーバータンク | 別体式 |
オーバーホール部品の調達方法
ブレーキ関連の部品はどうしてもゴム類の部品を中心に劣化が進むので、定期的なオーバーホールが必要となります。
ビューエル純正部品にも当然オーバーホールキットが存在しており、今でも入手は多分可能。XL系ビューエルのオーバーホールキットは流石に見ることはめったにないけど、XB系はまだ見かけることはありますね。ちなみに、XL系ビューエルとXB系ビューエルとはオーバーホールキットの品番が違い、中身も違うみたい。物自体は同じだけど、キットに含まれる部品の範囲が違うんです。
XL系のリペアキット | XB系のリペアキット | |
品番 | 45073-98Y | H0040.F |
品名 | PISTON SET,master cylinder | PISTON SET,master cylinder |
内容 | ピストン、スプリング
シール×2 ダストカバー、サークリップ プッシュロッド |
ピストン、スプリング
シール×2 ダストカバー、サークリップ |
XL系はハーレーに準じたパーツNoの振り方だけど、XB系はいかにもBuellって感じのパーツNo。
とはいうものの、基本的には両者ともほぼ同じもののはず。両者の一番の違いはご覧の通りプッシュロッドの有無なんだろうけど、
このプッシュロッド先端は結構腐食が起こりやすい様子。どうも新車時からここにグリスっ気がほとんどないことが腐食が生じやすい原因っぽい感じ?これまで何台分かの中古部品を見てきましたが、ほぼ全て状態が悪かったです。みんなグリス塗りましょう!
別にここの状態が悪かったとしても錆びを落として綺麗にすれば機能上は問題ないはずなんだけど、せっかくピストンを新品にするならこの部品も付いてきてくれた方が嬉しいですね、わたしは。
さて、リアブレーキマスターシリンダーをオーバーホールしようした時、現状ではXB系のリペアキットを入手すればいいんだけど、そもそもMade in Japanのニッシン製の部品をわざわざアメリカから取り寄せるというのもいかがなものかと…。また、プッシュロッドが傷んだ場合や、今後XB系の補修部品が手に入らなくなった時も考えておきたいものです。
そこで真っ先に思いつくのが、ピストン径1/2のニッシン製マスターを採用する国産車の純正部品を流用すること。
ニッシン製の1/2サイズのリアブレーキマスターはとても一般的なものなので、国産4大メーカーの様々な車種で使用されています。絶版車でもパーツリストがネットで閲覧できる、ヤマハかカワサキの部品の流用がおススメ。
ヤマハだと旧V-MAXやYZ85などが1/2サイズのニッシン製マスターシリンダーを採用していたので、そのリペアパーツである”1FK-W0042-50 シリンダキット,マスター”が使える・・・はず。これは現行車でも使われている部品だから、今後の供給は全然問題無し。
なお、”はず”っ濁しているのは実際には試したことがないから。形状的にはほぼ間違いないんだけどね。以前から何度も試したいとは思っていたんだけど、後述の理由で実際に試したことがないのです。
ちなみに、デイトナのオーバーホールキット23655を流用する方もおられますが、あれは同じ1/2サイズでもフロントブレーキ用なのでピストンが交換出来ないんですよね。またプッシュロッドも付属しません
なお、このリザーブタンクへとつながるいかにも痛みそうな部分はビューエル純正部品はおろか、他車種でも交換部品が設定されていないことが多いようです。
ここからフルードが漏れるんだよ!!って方もご安心を。
この部分はデイトナから交換部品が出ているので、ちゃんと交換することが出来ますよ。ありがとう、デイトナ!
本当に使えるのかどうかも実際に調べていますので、詳細はこちらの投稿をどうぞ。
リアブレーキマスターは使い捨てた方が良い?
ここまでの話ならリアブレーキマスターのメンテナンスには全く問題ないよね!って結論になるんですが、実はそんな簡単な話ではありません。
先程のリペアパーツたちにも問題があって、それがお値段。
XB系ビューエルのリペアキット(H0040.F)のようなプッシュロッド無しのキットだと3,000~4,000円程度だけど、XL系ビューエルやV-MAXのリペアキットのようなプッシュロッド有りのキットだと5,000~7,000円程度します。それにデイトナのホースコネクタ部を合わせると8,000円弱。
新品のマスタシリンダーが1万円ちょっとで購入できることを考えると、オーバーホールするのが非常にアホらしくなるようなコスパの悪さ。
さらに、マスターシリンダーってオーバーホールできないボディ本体も結構痛むもの。
こういうOリングが嵌る部分だとか、プッシュロッド周辺部は腐食していることが多いです。ブレーキフルードはエンジンオイルと違って吸湿することに加え、リアブレーキって皆様お手入れを少しサボり気味?
オーバーホールしても全体を完全にリフレッシュすることが出来なくて、更に新品を購入することに比べて安価に済むわけじゃないってことを考えると、リアマスターシリンダーって使い捨てた方がいいんじゃないの?って気がしますね。
厄介な40mmピッチ
リアブレーキのマスターシリンダーを使い捨て、つまりオーバーホール時期になったらアッセンブリで交換するとなった場合、代わりとなるマスターシリンダー一式を用意しなければなりません。
そこでまず考えつくのが国産車の純正部品の流用。
冒頭で触れましたようにビューエル純正のリアブレーキマスターはピストン径1/2のニッシン製ですから、この仕様は国産車でもたくさん使用されています。なんならニッシンに拘る必要もないし、ヤマハならOEMのブレンボも選べちゃう!現行車ならパーツ供給の心配もまずありませんしね。
と思っていろいろ探してみると気がつくのが、ビューエルの取り付けピッチ40mmという厄介さ。
結論から申しますと、この取り付けピッチ40mmはかなりマイナーです。
国産車にも40mmの車種はあるにはあるけど、圧倒的に49mmが多いみたい。例えば旧V-MAXなんかは40mmのようですが、旧V-MAXの最終モデルは2007年…。まだ新品部品が出るかもしれないけど、代替部品としては安心!というわけじゃなさそう…。
40mmピッチで容易に入手出来るのはDucatiやBMWなどの外車でよく採用されているブレンボか、サードパーティー製のゲイルスピードくらい。でもゲイルスピードにはピストン径1/2はないからキャリパーの変更が必要になるし、ブレンボはバンジョーボルトやホースの寸法がニッシンとは違うから、そこら辺一式が総取っ替えになっちゃうのがデメリットかなぁ。
まとめ
ポイント
純正リアマスターシリンダーのオーバーホールの部品は他車種流用やデイトナで入手は可能
しかしながらオーバーホールの部品代はかなり割高
アッセンブリー交換となると選択肢は非常に狭い
という感じ。
とりあえず、わたしの手元には取り付けピッチ40mm、ピストンサイズ13mmのブレンボ製マスターシリンダーが。
次のオーバーホールのタイミングで、試験的にブレンボ製にしちゃおうっていう試みです。
リアブレーキマスターをオーバーホールせず、定期的に交換する前提なら40mmピッチのボディが最も入手しやすいブレンボにしてしまおうというわけ。ちなみに、ブレンボにおいてもリアブレーキマスターシリンダー(特にピストン径13mmのタイプ)のオーバーホールキットはほとんど出回っていない様子。やっぱり使い捨て前提なのか……。