今年の梅雨は記録的な日照不足でしたが、梅雨が明けてからは一転して毎日のようにカンカン照り。もう、本当に嫌になるぐらいの陽射しと暑さですね。
こうも暑いととてもじゃないけどバイクに楽しく乗れるような状況じゃないし、そもそも空冷バイクであるBuellさんにとっても厳しい以外の何物でもない季節。もう絶版車なんだし、こういう時は無理して乗らずに他のことをしましょう。うん、そうしよう…。
というわけで、本日は久しぶりにカスタム作業のご紹介。
もう長らくバイクの改造なんてしてなかったけど、わたしは元々はバイクに乗ることよりも、整備することよりも、改造が大好き。久しぶりにせっせと手を動かしていると、そんな自分にとって当たり前のことすら忘れかけていたことを思い出しました。
やっぱり手を動かして作業するのは楽しいですね!
そうだ、シートレールをバフ掛けしよう
というわけで、ガレージの奥から引っ張り出してきたのはBuell XB9Sのシートレール。
高年式の車両ならこのシートレールはかっちょいい黒色の粉体塗装がされているけど、わたしが所有しているシートレールはそうじゃない年式のもの。安っぽい銀色の塗装仕上げになっていて、お世辞にもかっちょいい仕上げとは言えません。ならば、この何の面白みもない塗装を剥ぎ取って代わりにビッカビカに光らせちゃおうぜ!!ってわけ。
この考えはもう何年も前からあるんだけど、
せっかく加工するならついでにドリルド加工をしよう・・・、
ついでにシートカウルをしっかり固定出来るようにどうにかして加工しよう・・・、
とやりたいことが増えるばかり。せっかくバフ掛けするなら二度手間にならないように、その前に思いつく加工は全てしたいな~って。
しかしながら、ドリルド加工はすぐに行ったものの、シートカウルを固定するいいアイディアが浮かばなくてその後何年も放置してしまいました。いいアイディアが思いつかないとついつい放置してしまうのがわたしの悪い癖なんですよね。
このまま放置するのはよろしくないから、二度手間になってもいいからとりあえずバフ掛けしちゃおう!と思い立ったんです。まだシートカウルの固定方法は思い付いていないけどね。
使う道具
使う道具だけど、まずは下地を作る為のFCディスク。
FCディスクっていうのは固い繊維質のディスクで、一般的な紙やすりタイプのディスクと違ってある程度柔軟性があるのが特徴。細目と粗目の2種類あります。紙やすりに換算するとどの程度の番手かは分からないけど、アルミ程度ならゴリゴリ削ってくれる頼れるやつ。というか、粗目の方はゴリゴリ削り過ぎるのでその後の工程で無茶苦茶大変になるんですよね。研磨痕が全然消えないんです。
今回はそんなこともすっかり忘れていたので、大変な目にあいました。いや、実はまだ大変な目にあっている最中なんです。傷が消えな~い!!
後は仕上げ用のオフセットサイザルとオフセットフェルト。そして各種研磨剤。
全て100mmのディスクグラインダーに取り付けて使用します。
これらの道具を使ってシートレールをビッカビカにバフ掛けしてやりましょう!しかしながら、電動工具は楽チン!というイメージがあるんだけど、決して”簡単”ではないのがバフ掛けの難しいところ。
粗目のFCディスクはほどほどに
バフ掛け以前の問題なんだけど、Buellさんは部品の仕上げがイチイチ残念なんですよね。
例えばこのシートレールのパーティングライン。
こんなにくっきりはっきりとパーティングラインが残ってるのって、趣味性の高い大型バイクでどうなの!?って思うんですよね。今回はせっかく全体を研磨するわけだし、このような微妙な部分は全て削り落としてやりましょう。
表面の塗装も削ぎ落さなきゃダメだし、先程のような造形的にダメダメな部分の綺麗にしなきゃだし、まずは粗目のFCディスクで全体をゴリゴリ削ります。本当にゴリゴリ削れるので、作業はあっと言う間。
しかしながら、この研磨力の強さは作業時間の短縮には効果的なんですが、鏡面化という目的においてはデメリットもあります。
というか、そのデメリットが結構致命的。
今思い返すと数年前も同じデメリットで苦しんだ経験があるというのに、そんなことは全く忘れてしまっていたんです。
そんなことはまだまだこの時点では思い出していません。久しぶりに手を動かして作業をしてるもんだから楽しくて、楽しくて。
続いて、今度は細目のFCディスクで丹念に削っていきます。お~、綺麗になってきた~!とこの時はウッキウキな気分でした。
そして、サイザルバフで鏡面に近付けようとした時にようやく異変に気が付いたんです。
光ってるけど、傷 だ ら け じ ゃ な い か ! !
そうです、この引っ掻いたような傷は最初の粗目のFCディスクによる研磨痕です。
FCディスクの粗目と細目が紙やすりの番手で何番に相当するのかは分からないけど、なんだか両者の目の荒さは随分離れているように思います。つまり、粗目のFCディスクを使っちゃうと、その後は相当頑張って研磨をしないとFCディスクの細目じゃ研磨痕を消すのが難しいんです。
これがすっかり忘れていた粗目のFCディスクのデメリット。粗目のFCディスクによる研磨痕はかなり深いので、細目のFCディスクによる研磨の前にもう一段階別の研磨工程を設けた方がいいように感じます。
とはいうものの、そんなものはすぐに用意出来ないのでとりあえずFCディスクの細目で研磨をやり直し。そもそも、FCディスクの研磨力が紙やすりで言うところの何番に相当するか分からないから、どの程度の番手のディスクを選定したらいいのかすら分からないし。
いつか検証してディスクを選定しないと・・・と数年前に思いついていたことをこの時点でようやく思い出しました。遅すぎぃ!!
さて、再研磨ですが、粗目の研磨の時とは研磨の方向を変えることで研磨痕が残っているのかどうか確認しやすくなります。
そう簡単に粗目のFCディスクの研磨痕は消えないことを思い出したので、とにかくこれでもかという位、細目のFCディスクで丹念に研磨します。
そして、再度サイザルバフによる鏡面化に挑戦。
先程よりもずっと研磨痕が少なくなりました。
更にフェルトバフと青棒で仕上げ研磨。
とりあえずこの程度まで光ってくれたら及第点?いやいや、近くで見るとまだまだ研磨痕が残っているんですよね・・・。やりなおしの時は相当頑張って再研磨したというのに、あれだけやったというのに、それでも最初の研磨痕が残っているという事実はかなりショック。心が折れてしまいそうだ・・・。
バフ掛けって難しい
このようなアルミパーツの鏡面加工なんですが、わたしは昔は耐水ペーパーでシコシコ研磨をしていました。
大抵の場合は、#400→#600→#1000→#1500 と耐水ペーパーの番手を上げていき、最後はピカールで磨くとそれなりに鏡面になってくれたものです。
この方法は単純で簡単なものの、とにかく時間が掛かって大変でした。なので、当時は電動工具とバフを使えばもっと簡単に、もっと短時間でポリッシュ加工が出来るのに・・・と思ったものです。
そして月日が流れて現在なんですが、当時の望み通り電動工具もバフも一式揃っています。
しかしながら、完成度は昔の耐水ペーパーの方が安定していたように感じます。例えば今回のシートレール、一見ピカピカに研磨出来ているようにも見えますが、近付くと研磨痕がまだまだ残っているんですよね。こんな失敗は以前の耐水ペーパーシコシコではまずありませんでした。
この差はなんだろ?と考えた時に、思いつくのはバフの番手の分かりにくさ。
耐水ペーパーならば番手の違う紙やすりが簡単に手に入ります。番手は単位面積当たりの研磨剤の量を示す規格なので、目の細かさが誰にでも分かります。粗い番手から徐々に細かい番手に上げていけば、そうそう失敗することは無いでしょう。
しかしながら、バフの場合はそう簡単にはいきません。
というのも、バフに関しても#400とか#800とか仕上げに関する表現はあるものの、この番手は紙やすりの規格の#400とか#800とは明らかに違います。紙やすりの#400とか傷だらけだけど、バフ研磨の#400仕上げってほぼ鏡面仕上げを意味しますもんね。
JISのステンレスの表面仕上げの規格では、#400は400番バフで研磨したものって書いてあるけど、いや、だからその400番バフってなんやねん!って感じなんです。そんなもん、Amazonやモノタロウじゃ売ってないんですが…
仕事で鉄工所の方に話を聞いてみても、メーカーや施工者によって同じ#400でも仕上がりが違うとか?なんじゃそれ?
つまり、紙やすりと違って、この研磨剤を使ったらこの仕上がりになります、といったような決まりがないみたいなです。
この研磨剤とこのバフを使ってアルミを研磨したら、耐水ペーパーでいうところの#1500くらいかな・・・といった経験値がないと、わたしのように研磨痕を消すのに無茶苦茶苦労したりするんですよね。
こうも研磨痕が上手く消えてくれないと、やっぱり耐水ペーパーだね!って思いたくもなるのですが、電動工具を使用できるバフ研磨は効率的な鏡面加工には必要不可欠であることは疑う余地もありません。
シートレールはまだもう片方もあるし、スイングアームもバフ掛けしたいし、何ならいつかはフレームも・・・と企んでいるわたしとしては、このバフ掛けの技術は是が非でも取得したいんです。これからもしばらくは失敗の繰り返しだけど、いろいろ試してみてベストな方法を模索したいところですね。