XB9Rのシングルシート製作③ 本革を使ったシート表皮の製作

FRPとスポンジと、そして本革とで製作するバイクのシート製作。わたしの場合はビューエルXB9Rだけど、シートは全てのバイクにある部品なので、きっと他車種に乗っている人にも参考になるはず?

1回目はFRPでシートベースを製作し、2回目はシートスポンジの製作を行いました。3回目となる今回はいよいよ最後の仕上げ、シート表皮の製作を行います。

初めに断っておきますと、実は今回のシート製作ではいろいろと失敗しちゃっています。シートの張り替えならこれまで何回か経験があるけど、シートベースから製作するのは今回が初めて。シートベースのつくり、スポンジの整形、革の厚み、一連の工程の全てに失敗の要因があったのです。

この失敗の経験を次のシート製作に活かしたいと思いますが、皆様の参考にもなればと思いお恥ずかしながらも紹介させて頂きます。恥ずかしい!

 

まずは型紙作り

表皮製作を行うのにあたり、最初に行うのは型紙作り。シートがどれだけ単純な形に見えても絶対に必要となるのが型紙。

型紙なんてスポンジに紙をあてがって、印付けて、切るだけじゃないの?

って軽く考えていたんですが、もうこれは大きな間違い。勘違いも甚だしい!

シートは単純な形に見えても曲線満載の三次元構造、しかもスポンジは当然柔らかい素材なので型紙を作ろうと紙を押し付ける度にいちいち変形してしまい、正確な寸法の型紙を作るのは至難の技なのです。

今までの経験上、一発でぴっちり作るのはまず無理なので、とりあえず適当にそれっぽい形に切り出した紙をぺたぺたと貼り付けていきます。

 

そうすると、こうやって隙間が空いたり、逆に紙が余ったりする場所が発生します。隙間が空いたら別の紙をそこにペタッと貼り付けたり、紙が余ったらハサミでカットして、ツギハギだらけの型紙を仕上げていきます。

 

で、完成したツギハギ型紙を元にして、今度はツギハギじゃない型紙を作ります。

ツギハギだらけの型紙は今にも崩壊してしまいそうですが、キチッとした型紙なら保存してまたの機会に使うことができます。型紙にL・Rと記載しているのは型紙が左右非対称だから。こうして型紙にしてみると、シートのスポンジが左右対称に整形できていないのがよくわかりますね。スポンジ整形は難しい…。

とまぁ、こんな感じで型紙を作ったのですが、まずここが今回の一つ目の失敗ポイント。

ここでシートスポンジの整形に問題があることに気が付いたわけですが、目で見た感じそれほどきにならなかったので、そのまま作業を続行したんですよね。でもこの整形のマズさは表皮を張った後に結構気になるようになったのです。恐らくですが、真っ白のスポンジ状態とレザーを張った状態とでは見え方が全く違うのでしょう。

 

レザーの裁断

型紙ができたので、お次はその型紙を使ってレザーを切り出します。今回使用するのはゴートスキン。山羊さんの革ですね。牛の革よりもずっと柔らかい手触りでわたしは大好きです。バイクのシート製作で使用するのは初めてですが、耐久性が高くお手入れが簡単な革なので、きっとバイクのシートにも向いているはず?

 

本革は当然ビニールレザーなどよりもずっと高価な素材なので、切り出す際は少々緊張します。最初だけですけどね。製作した型紙には縫いシロが考慮されていないので、ある程度余裕をもたせてレザーに印付けを行い、切り出します。

 

パーツを切り出しました。

 

今回購入したレザーには少々状態が悪い場所もありましたが、まぁこれでも天然素材の醍醐味ってことで。

 

シート表皮の縫い合わせ

切り出したパーツを縫い合わせていきます。今回細かいものを含めるといろいろと失敗していますが、最大の失敗は間違いなくこの工程。今回使用しているゴートスキンは厚みがだいたい1.8mm程度あるのですが、全ての箇所をその厚みのまま使用したのは流石に無理がありました。立体的なものを縫い合わせるにはあまりにも厚みがありすぎるように感じます。

 

本革の手縫いは、まずは綺麗に縫い目が揃うように専用の工具で印をつけて、

 

その印に従って穴を開けていき、

 

そしてその穴を使って縫い合わせていくというのが基本の工程。

 

1.8mmもの厚みがあると柔らかいゴートスキンといえども、なんとも重厚感のある感じに仕上がります。こういう直線部分だとそれでも綺麗に仕上がるのですが、

 

こういう曲線部分はどうしてもその厚みにより滑らかな曲線になりません。ガタガタになってしまってとっても不格好。1.8mm厚のむっちり感はとても素敵ですが、革の折り返し部分や縫い代部分は漉いて薄くするべきですね。

 

シート表皮の固定

今回の製作で最も頭を悩ませたのがこの工程。

シート表皮をどうやってシートベースに固定するのか?ということです。

純正でよくみられる少し柔らかめのシートベースであればタッカーで固定できるでしょう。でも今回製作したシートベースはFRPなのでタッカーは打ち込めません。

鉄製のシートベースなんかでは穴をあけてその穴にリベットやネジでレザーを固定するような方法をよく見かけますが、今回のシートベースの裏面は真っ平らなのでその方法も難しそう。リベットの厚みだけシート裏面から飛び出してしまうし、なによりもそのリベットでシートカウルが傷つくのだけは絶対勘弁。

今回の構造はカフェレーサーでよくみられるようなシートカウルのシートと全く同じだと思うのだけど、びっくりするくらいそういったシートの裏側の画像って見つからないんですよね。もしかしてシート裏面って見せたくない場所なんでしょうか?

悩んでも答えはでないので、今回はボンドで貼り付けました。

 

ただ、この工程でも革の厚みが無茶苦茶邪魔してくれました。もうここまでくるとどうしようもありませんが、革の厚みは絶対に場所によって調整した方がよいです。次は絶対にそうしよう。

 

シートカウルへの取り付け

なんとかシート表皮を固定できたシートを今度はシートカウルに固定します。

元々ついていたシート(という名のただのスポンジ)と同じように両面テープで貼り付けるだけでも機能的には全く問題ないんでしょうが、できればしっかりと固定したいので別の方法を採りましょう。

そんな時に役立つのがウェルナット。

ゴムの中にはナットが埋め込まれており、ボルトを締めこんでいくだけで手が届かないところにナットを設置できる便利グッズです。XB9RやXB12Rでは純正でもアッパーカウルを固定する為にアッパーカウルステーに埋め込まれていますよね。

 

シートベースの後面と底面に計4か所取り付けました。普通ナットを締める時は反対側からナットを抑える必要がありますが、ウェルナットだと抑える必要はありません。なのでリベットのような感覚で、このような反対側にアクセスできない場所でも使用することができるのです。指定のサイズで下穴を開けるだけですから、使い方もとっても簡単。

 

これでしっかりとシートカウルに固定することができました。

 

自作シングルシートの完成

という感じで、ついに自作シートの完成です。

シートの張り替えならこれまで何回か経験があるけど、シートベースから製作するのは今回が初めて。思い返せば全ての工程において何かしらの失敗があり、その出来には全然満足できておりません。

失敗の際たるものは、革の厚みの調整をしなかったこと。そしてその次にシートスポンジの整形がイマイチだったことでしょうか。特に革の厚みの調整は本来なら滑らかな曲線にしたい箇所がカクカクっとした感じになってしまうことの原因になっており、本当に心残り。

 

シート表面の面積が多い割にヌメーっとした感じになっちゃっているので、タックロールなんかをつければよかったかも。ただ、大好きなゴートスキンを使っただけあり、その質感は最高です。それだけに数々の失敗が尚更悔やまれる…。

 

そうそう、バイクのシートで大切なのはやっぱり座り心地やホールド感などの使用感ですよね。これに関してはかなり満足。なによりもお尻のもっこり部分ができたお陰で加速時のホールド感が抜群なんですよ。その一方でやはり革の厚みのせいか太ももの内側に縫い合わせ部分が刺さって少々、痛い。

というわけで、完全自作シート1号は、質感は好きだけど造形・使用感共に課題の残る結果となりました。この経験を活かすには、完全自作シート2号を作るしかない!というわけで、自作シート製作はまだまだこれからも続きます。

 

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