痛み具合の割には思いの外高価だったシマノの10速用STIレバーであるST-5600。かなりのヤレ具合だったので使用前のオーバーホールは必須といった感じ。前回は分解作業についてご紹介しました。
STIレバーの分解は初めてでしたが、使う道具も少なく案外簡単に分解することができました。
今回はこの分解したSTIレバーを綺麗にしてまた組み上げたいと思います。
みすぼらしく劣化したレバーのバフ掛け
このSTIレバーで最も残念な感じになっているのがレバー部の傷み。
クリアー層かアルマイトなのかはわからないけど、とにかく表面が劣化して筋状の変な模様が入っています。さすがにみすぼらしすぎますので、まずはこいつを綺麗にしてやりましょう。
まずは変に劣化している表面部分を削り取りましょう。使用するのはこちら、ニューレジストン社のFCディスク。わたしは20歳くらいからずっとこのFCディスクでアルミを磨いてきました。FCディスクには荒目・中目・細目がありますが、メインで使用するのは細目ですね。粗目だとほんとうにゴリゴリ削れてしまいます。磨き傷を消すのも大変。
今回も細目だけで簡単に劣化層を削り落とすことができました。サーッと撫でるだけで一瞬で削れましたから、レバーの表面層はかなり薄いようです。
このまま磨いて終わりとするのが普通なんでしょうけど、わたしずっとやりたかったことがあるんですよ。それがレバーへのドリルド加工。昔のロードバイクではよくみられた加工だと思うんだけど、部品の質感と相まってわたしにはあれがドストライクだったのです。格好いい!マネしたい!
印をつけて、ポンチで軽く窪みをつけて、そしてボール盤で穴あけ。画像のような割と平面チックな場所だと穴あけは簡単なんですが、STIレバーって全体的に曲線で構成されており、しかもレバーの根元や先端はその度合いが強いので垂直に正確に穴を開けるのは結構大変です。穴あけ部分の水平が出るように一か所づつしっかりと固定方法を工夫することが上手に穴を開けるためのコツでしょうか。何事も面倒臭がってはいけません。
とりえあずΦ3mmで穴を開けてみました。昔のロードバイクのレバーってこんなイメージですよね。しかしながら、このレバーは昔のロードバイクのレバーよりもなんかゴツイので、もう少し穴径を大きくしてもよさそう。
穴の径をどうするのかは結構悩んだけど、レバーは根元から先端に向かって細くなっているので、それに合わせてドリルドも根元から先端に向かって徐々に小さくなるようにしました。先ほどのΦ3mmと比べるとかなりドリルドの主張が強くなりましたね。
加工が終わったらバフ掛けをして仕上げます。FCディスクの細目で下地を整えていれば、あとはサイザルバフと赤棒・白棒の組み合わせでしっかりと研磨し、仕上げにフェルトバフと青棒の組み合わせでサッと研磨すれば素人施工でもそれなりに仕上げることができます。
研磨後はこんな感じ。メッキとはまた違う、アルミ特有の少し優しい感じで深みのある輝きがわたしは大好きです。自転車の部品はオートバイと比べると小さいから作業が楽でよいですね。
ラチェット部の洗浄とグリスアップ
レバーの研磨が終わったら、お次はラチェット部の清掃作業を。
今回入手したST-5600のラチェット部、めっちゃ汚いです。そりゃブレーキング時には外部に露出するけど、この部分ってそれ以外の時は基本ブラケットに収まっています。それなのにこのようにびっしりと汚れが付着していたんですから、もうびっくりです。どんな感じで使用されていたんだろう・・・。
ゴミや汚れは古くなったグリスに付着していますから、古いグリスごと徹底的にパーツクリーナーで洗浄します。今回オーバーホールといいつつもメーカーが分解非推奨していないラチェット部は分解していません。そんなので綺麗にできるのかな?って少し疑問でしたが、予想以上にピッカピカにできました。
しっかり洗浄したら、丁寧にグリスを入れていきます。グリスといえばこのようなチューブに入ったタイプが主流ですが、こういうグリスは今回のラチェット部のような複雑な形状へのグリスアップには向いていません。どう頑張っても奥まった内部までグリスが入っていかないのです。
今回のような作業だと、やっぱりスプレータイプのグリスがよいですよね。今回わたしはオートバイのワイヤーの注油で愛用しているLAVENのワイヤーグリスを使用してみました。流動性がありながらもしっかりと潤滑成分が残るスプレーなので、こういう場所にはぴったりのはず。
カチカチとラチェットを動かしながら、しっかりと稼働部に注油していきます。カチカチ動かしながら注油すると、明らかに動きの滑らかさが変わっていくのでおもしろいですね。
樹脂製のブラケット部の傷の補修
中古で手に入れたこのST-5600。筋状の表面層の劣化に目を奪われがちですが、樹脂でできたブラケット部の状態もなかなか悪いです。大きな傷だけではなく、細かい摩耗のせいで全体的に白っぽくなっています。元々の樹脂も安っぽい質感ですから、それと相まってかなりみすぼらしい感じ。
この部分なんて傷だらけ。乗っているときはあんまり目につかない部分だし、そもそも機能的に問題ないので気にしないというのも一つの手なのですが・・・。せっかく他の部分をピカピカにしているんですから、やっぱりこのままっているのはちょっとないかなー。
ただ、わたしは樹脂パーツの傷消しにどうも苦手意識があるんですよね。基本的には研磨するだけなんですが、樹脂は削ると白っぽくなるので艶々ピカピカにはなりません。ましてや新品でも中途半端な半艶ですから、それに合わせるような補修はわたしにはぜーったい無理。
確実なのは下地を整えてからの塗装なんでしょうけど、そこまでするのは面倒臭いし、塗装したら塗膜が傷まないように扱いに気を使わなくてはならなくなります。そんなの面倒!そんな時に便利なのがシリコンスプレー。
ほんとうは樹脂専用の艶出しケミカルが間違いないんだろうけど、シリコンスプレーでもそこそこには仕上がります。しかも安い。
今回は2000番まで丁寧に研磨したのち、シリコンスプレーで艶出ししました。質感は決して100点ではないけど、それでも90点くらいには達したのではないかと。これなら気を使わなくてもいいし、傷がまたついても補修は簡単。
細かい部品類もしっかり洗浄
細かい部品も一つずつパーツクリーナーで洗浄。洗浄しても組み立て後は見えない部品ばかりですが、せっかく全体が綺麗になったんですから、こういった細かい部品も綺麗な方が気持ちがよいです。
組み立て、そして完成
洗浄した部品を並べました。ラチェット部は分解していないけど、十分綺麗に、そして動きも良くなったと思います。これくらいの分解、洗浄であればさほど手間は掛からないので、ワイヤー交換のタイミングで定期的にやってもよいですね。
組み立てはとっても簡単。分解したときと逆の順番に組み立てていくだけだし、コツが必要な部分も特にはないからサクサク組み立てることができるでしょう。稼働部となるレバーの根元のピンやブレーキワイヤー受けはしっかりグリスアップしておきます。
ブラケット部分を覆うゴム製のカバーはとても無残な状態になっており、とてもじゃないですが再利用は無理。かといってゴム製の部品なんて補修はできません。でもこのブラケットカバーについては、多くの補修部品がほぼ廃盤となっており入手が困難なST-5600用の補修部品でありながらも、いまでも普通に入手することができました。ブラケットカバーは消耗品なので、入手できるうちにいくつかストックしておいてもよいですね。
新品はやっぱり気持ちが良いです。でもゴム製品ですから、いつかは加水分解でベトベトしだすのは避けられません。ブラケットカバーは消耗品なのです。
そんなわけで組み立て自体はものの数分で完了。レバーのドリルド加工とバフ掛けに時間は掛かりましたが、その甲斐もあって見違えるくらい綺麗になりました。最近の自転車のパーツって黒色が多いけど、わたしはやっぱりバフ掛けされたアルミパーツの質感が大好き。昔のパーツではアルミの質感を活かしたパーツが普通にありましたが、復活してくれませんかねぇ。