サイクロンM2のエンジンの種類とクランクケースの入手

フレームの次に大切なクランクケース

前回のフレーム編ではバイク本体=フレームであると申しましたが、その次に重要となるのがクランクケース

というのも、バイクが車検を取得する為にはフレームNoとエンジンの型式を車検証(もしくは返納証明書等)と一致させることが必須となるからで、そしてそのエンジンの型式はクランクケースに刻印されているからです。

パイプフレームのXL系ビューエルといえばスポーツスターのエンジンをベースとしたチューンドエンジンを搭載していることが大きな個性なので、当然エンジン型式はスポーツスターとは異なります。クランクケースの形状自体はビューエルもスポーツスターも同じっぽいけど、その為ビューエル専用のクランクケースを入手する必要があるわけです。

ちなみに、ビューエルエンジンとスポーツスターのエンジンで共通ではないのは軽量なクランク高圧縮・大口径バルブのシリンダーヘッドで、これらがビューエル専用部品となっています。年式やモデルによっては更にカムピストンもスポ―ツスターとは違うものが使われているみたい。

シリンダーヘッドはライトニングヘッドサンダーストームヘッドと呼ばれる2種類のヘッドがあって、ライトニングヘッドはS1や初期のM2に、後者は後期のM2やS1W、X1に採用されていました。ライトニングヘッドではスポーツスターと共通のピストンが使用されていたようですが、サンダーストームヘッドでは専用のピストンを使用するように変更されていたみたいですね。

このシリンダーヘッドはスポーツスターにポン付けできる手軽なチューニングパーツであることから結構人気の高い部品のようで、15年以上昔の中古部品であるにも関わらず結構なお値段で取引されています。中古のエンジンASSYがおよそ8万円から12万円程度、シリンダーヘッドは前後セットで3.5万円から5万円程度といったところでしょうか。

 

ビューエルエンジンといってもいろいろあります

そんなビューエルエンジンですが、一口にビューエルエンジンといってもいろいろありますから、車検証等に記載されている型式のクランクケースを探し出す必要があります。

もちろん、エンジンの型式が車検証等と異なる場合でも改造申請を行うことで公認を取得することは可能なのですが、エボ系ビューエルの場合はエンジン型式が違っても中身にそれ程大きな差がないので、わざわざ改造申請をしてまで載せ替える程のメリットはないように思います。出力が大幅に向上!とかなら分かるのですが、せいぜいシリンダーヘッドかカムが変わる程度の違いですしねぇ……。

エンジン探しの話に戻りまして、私のサイクロンM2の型式は返納証明書の写真の通りKS11。エンジンの型式もKS11。なので、そのKS11のクランクケースを探す必要があります。

いろいろ調べた結果、6年間に渡るM2サイクロン・サイクロンM2のラインナップの中で、ざっくり分けると下記3種類のエンジンが存在していたようです。

種類 型式 シリンダーヘッド
KS11① KS11 ライトニングヘッド
KS11② KS11 サンダーストームヘッド
LS11 LS11 サンダーストームヘッド

カタログスペックでは、ライトニングヘッド仕様が83ps、サンダーストームヘッド仕様が91ps。

実際にはKS11②の中でもオイルラインの変更でクランクケースの形状が異なるものがある等、もう少しエンジンの種類は多かったみたいですが、現在調査中。なかなか情報が少なくて困っています。

最高出力にはそれほど拘りはないし、そもそもシリンダーヘッドは後々どうにでもなるので、まずは①②を問わずに1997年から2000年頃まで採用されていたKS11のエンジン、もしくはクランクケースを探すことにしました。

 

すんなりとクランクケースをゲット

待つこと1カ月程度、意外とすんなりとクランクケースをゲットしました。ゲット先はみんな大好きなヤフオク。

エンジンASSYだとどうしても予算オーバーだったので、まずはクランクケースとクランクのセットを入手。オイルポンプとコイルが付属していて2万円程でした。

ビューエル専用部品である軽量なクランク(フライホイール)はともかくとして、このクランクケース自体はスポーツスターと共通なので、機能的には必須な部品ではありません。しかし、前述の通りエンジン型式はクランクケースに刻印されているので、法的な意味でこのケースはとても重要なのです。

なお、長いことヤフオクをチェックしている限りでは、運が良ければクランクケースとクランクのセットは8千円程度でも入手できることがあるようです。

 

もちろん、KS11の刻印付き。

エンジンナンバーの解読方法はまだ理解できていないけど、「Y」がフレームナンバー同様年式を表すのであれば、2000年モデルのクランクケースかもしれませんね。

しかしながらどうもすっきりしない点があって、それはオイルライン。

どういうことかというと、

99年モデルまでのスポーツスターのカムカバー合わせ目のオイルラインの形状がこんな感じ(ガスケットの上部分の細長い穴のところね)であるのに対し・・・

00年から03年モデルまでのスポーツスターのカムカバー合わせ目のオイルラインの形状がこんな感じに変更されています。ガスケットに、ボルト以外の穴が複数追加されているでしょ?

そこで改めて今回入手した2000年モデルのものと思われるビューエルのカムカバーを見てみましょう。

この通り、今回入手したケースの形状はスポーツスターで言えば2000年式以降のモデルと同じ形状であることが分かります。

サイクロンM2は2001年からは型式はLS11になるはずだから、このオイルラインの形状のKS11エンジンは2000年式しかないはず。ここまでは何ら不思議はありませんよね。だってビューエルとスポーツスターはベースのエンジンは同じなんですから。

しかしながら、ふと手持ちの2000年モデルのサイクロンM2のパーツリストをパラパラめくってみると……

あれぇっ!?どう見ても99年までのスポスタと一緒!!

パーツリストのイラストが間違っているのか、それでもスポーツスターでの変更が必ずしもビューエルに当てはまらず、このクランクケースは2001年以降のものなのか……。でも、2001年からは型式はLS11になるはずだしなぁ……。じゃぁ、このクランクケースは何なのっ!?

ド素人のわたくしにはまだ答えは分かっておりませんが、クランクケースに合うカムカバーを探せばいいだけでもあるので、あまり気にしないようにしましょう。いやぁ、でもやっぱりなんかモヤモヤするなぁ。多分イラストの間違いだと思うけど。

 

クランクケースのレフトサイド。

XL系ビューエルのエンジンと言えばカセット式のミッションが特徴ですね。不具合の多いことで有名な部分でもありますが、クランクケースを割ることなくミッションを交換できるのはすごいと思うのですが……。残念ながらXB系ビューエルでは廃止されてしまいました。

 

嬉しいコイル付き。

エボ系ビューエルのエンジンではクランクケースにも放熱フィンが設けられており、とてもカッコイイです。これも、残念ながらXB系では廃止されてしまっています。

 

こちらは反対側のクランクケースライトサイド。

クランク軸と直角に交わっている軸はオイルポンプの駆動軸で、この軸はクランクシャフトからスクリュー状のギアを介して駆動されます。

ものすごく繊細そうなギアですが、その見た目通り摩耗や粉砕といったトラブルが報告されている泣き所の一つ。こういう部分に限って、後のXB系ビューエルにもしっかり継承されていたりします。

 

オイルポンプは年式違い?

せっかくオイルポンプがついてきているので、そちらも確認しておきましょう。

オイルポンプはボルト2本で固定されているだけなので、簡単に取り外すことができます。

 

スポーツスターでは2001年と2007年にオイルポンプの改良が施されているようですが、取り外したオイルポンプは大きさ的にどうやら2001年以降のものっぽいようです。ということは、やっぱりこのケースは2001年以降のもの?それとも前オーナーがオイルポンプのアップデートを行っていた?

中古部品なので正解が分からずモヤモヤするなぁ……。

 

手持ちの2003年式XB9Rのオイルポンプと比較してみると、刻印の文字の形は違うものの、番号(26487-98)と各部の寸法はほぼ同じでした。ということは、やっぱりオイルポンプに関しては2001年以降のものということですね。

 

プライマリーカバーは共通部品

こちらはクランクケースとは別に入手したプライマリーカバー。車体左側のクランクケースカバーとも言えます。

調べた限りでは、この部品は年式による違いがないはず。また、2003年モデルまでのスポーツスターとの共通部品でもあります。XB系のものよりも全体的に丸っこいデザインで、温かみを感じる造形です。XBよりこっちの方が好きだなぁ。

 

剥き出しのクランクシャフトを保護する為に、早速取り付け。これでこっち側は多少物が当たっても大丈夫。まだ反対側はクランクシャフトが剥き出しだけど。

XB系のプライマリーカバーはレリーズ受けの不具合がある為か、もしくは単純に数が少ない為か、結構高価なお値段で取引されているのに対し、このエボ系のカバーは2,000~3,000円程で購入することができます。スポーツスターと共通って、すばらしい!!

ちなみに、スポーツスターと共通ということはハーレーの強みである豊富なカスタムパーツが使えるってこと。

むちゃんこ高価だけど、こういう部品にも憧れる……。

このような高価なカスタムパーツよりも今は車体を組み上げる方が先なのですが、いつかはこういう部品にも手を出してみたいものです。

 
次:厄介なXL系ビューエルのアイソレーター

サイクロンM2のトップへ戻る