素人DIYでもできる!割れたカーボンパーツの修理方法

わたしのビューエルの外装パーツはほぼカーボン製。

カーボンパーツといえば軽量化の代名詞とも呼べる素材ですが、わたしにはそんな目的は一切なく、当時手軽に入手できる外装パーツがDAZ_MOVEMENTさんのカーボン製品だったというのが購入した理由です。絶版車の部品で最も早く入手困難となるのが外装パーツとよく聞きますが、こうして代替品が手軽に入手できるのは大変ありがたいことですね。

そんなわけで購入時は全くカーボンに対する拘りや憧れなんかがあったわけじゃないんですが、いざ入手してみるとカーボンならではの外観が無茶苦茶かっこよく、今ではすっかりお気に入りのパーツ。無塗装のカーボンパーツは安っぽいだとか、紫外線ですぐに劣化するだとかいろんなご意見をよく聞きますが、少なくともわたしのbuellさんはもう8年ほどずっと購入時の艶を維持していますよ。

なのに、

あろうことかガレージでバイクを押し倒してしまい、そんなお気に入りのカーボンパーツがバッキバキに。倒したときの勢いは全然なかったし、なんなら壁にもたれかかる感じで45度くらいしか倒れていないというのに、壁に立てかけていたスコップがものの見事に突き刺さりました。ピンポイントで、突き刺さりました。

あぁ、悲しすぎる…。

いくら悲しんでも割れたアッパーカウルは元には戻らないので、素人DIYで綺麗に直してやりましょう。

 

カーボンパーツは綺麗に直せる

まず最初にこれだけは言っておきたい。声を大にして言っておきたい。

ウェットカーボン(カーボンパーツのほとんどはこれ)に限った話ですが、カーボンパーツは比較的簡単に直せます。素人DIYでも直せます。FRPの補修よりもずっと簡単。

これはカーボンパーツの作りがFRPとは全く違うからなんだけど、


簡単にいうと、FRPもカーボンも骨格となるクロスに樹脂を組み合わせたプラスチックの仲間なんだけど、FRPはガラスクロスと樹脂が一体化しているのに対し、カーボンパーツはカーボンクロスと樹脂が一体化していないんです。

だからFRPはガラスクロスと樹脂がまとめて痛むことがほとんどで、補修もガラスクロスごとしなくてはいけません。しかしながらカーボンパーツの場合は例え割れても大抵の場合それは表面の樹脂だけで、柔軟性のある内部のカーボンクロスはそのまま元の形状を維持しています。だから割れた表面の樹脂だけ補修すればいいってわけ。

 

割れたカーボンパーツの補修方法

割れた樹脂部分の除去

まずは割れた表面の樹脂を丁寧に取り除いていきましょう。ターゲットとなるのは白く濁ってしまっている部分。この部分は割れた時の衝撃でカーボンクロスと表面の樹脂との間に空間ができてしまっている部分なのです。この上から新しく樹脂を塗ってもこの内部の白濁は残ってしまうので、こういった部分は取り除かないといけません。

先程説明しましたようにカーボンクロスと樹脂はそもそも全くくっついていないので、面白いようにペリペリ剥がれていきます。樹脂をペリペリ剥がす道具はなんでもいいんですが、薄羽のデザインナイフが鉄板アイテムですね。先端が鋭いことに加え、刃に適度なしなりがあるのがとても使いやすいです。

 

あらかためくり終えました。割れて白く濁っている部分さえ取り除けばよいので、多少のヒビは放置。このあとの樹脂で綺麗にすることができますから、それほど神経質にならなくて大丈夫。

画像中央の半艶の部分が素のカーボンクロス。なーんか白っぽいですが、あとで樹脂を塗ったら質感は全然変わるので気にしなくても大丈夫。同様に、カッターの刃で多少表面が荒れたりしても大丈夫です。

 

ポリエステル樹脂の塗布

割れた樹脂を取り除いたら、今度はそれに置き換わる新しい樹脂を塗布しましょう。

使用するのは不飽和ポリエステル樹脂。不飽和ポリエステル樹脂自体はFRPパーツの製作でいつも使っているものなんで、つまりFRPとカーボンパーツの違いなんて中に入っている繊維の種類が違うだけなんですね。一応ポリエステル樹脂にはカーボン用を謳う透明度の高いタイプもあるようですので、そういったタイプを選んだ方が仕上がりはより綺麗になるかも。

ポリエステル樹脂には硬化後にベトベトするノンパラフィンタイプと硬化後にカラッと仕上がるインパラフィンタイプの2タイプありますが、わたしはベトベトするのが大っ嫌いなのでインパラフィンタイプをいつも愛用しています。硬化後にガラスクロスを積層するような施工をするなら接着性に優れるノンパラフィンタイプが有利なんだろうけど、インパラフィンタイプでも表面を荒らせばちゃんと接着しますしね。

 

不飽和ポリエステル樹脂に付属の説明書どおりの割合で主剤と硬化剤を混ぜ合わせたら、刷毛を使って剥き出しのカーボン部分に塗りつけます。塗った瞬間、ひび割れやカーボンクロス表面の荒れは全く気にならなくなったでしょ?

樹脂を塗りつける時は割れた樹脂を取り除いた部分だけじゃなく、その周囲まで広ーく塗りつけるのがポイント。また樹脂は薄ーく塗るんじゃなくて、最初はなるべくこんもりと塗るのもポイントです。どちらも、後々削ることを想定してのことです。

 

ポリエステル樹脂の削り出し

ポリエステル樹脂が硬化したら、お次は削って整形していきます。道具は耐水ペーパー(紙やすり)を使うんですが、こういう作業の鉄則は、必ずあて木を用いるということ。紙やすりを直接指でもって作業を行うと、カウル表面がなだらかな凹凸になってしまいますからね。

補修箇所とその周囲をできるだけなだらかに繋げることができるよう、削りの作業は樹脂を盛った部分だけではなく広範囲に渡って行います。当然削り作業は目の粗い紙やすりから徐々に目の細かい紙やすりへと変更して行いますから、削る範囲も紙やすりの番手の変更と共に徐々に広範囲になっていくことになります。そうでないと、前の番手の削り目を綺麗に消すことができませんからね。

このカーボンパーツの修理で心掛けておきたいのが、一発ではそうそう綺麗にはならないということ。綺麗な補修をするには、チマチマと地道な作業を繰り返す必要があるのです。

 

これは削り途中の状態ですが、白っぽい部分はポリエステル樹脂の厚みが薄かったり、カーボンクロスが剥き出しになってしまっている部分です。わたしが下手っぴなのもあるでしょうが、削り作業を行っているとどうしてもこういう部分は発生してきますね。

 

なのでそういう部分には再度ポリエステル樹脂を追加し(今度は薄ーく)、

硬化後にまた削ります。この作業の繰り返し。

 

凹みがある部分などイマイチな部分を見つける度にまた薄っすらと樹脂を塗り、

また削ります。

 


このようにポリエステル樹脂を塗って、削って、をチマチマと繰り返していくと、その範囲は徐々に狭くなっていくはず。完成までもう少し!

 

表面のポリエステル樹脂の整形が満足いくまでできたら、最後にコンパウンドで仕上げの研磨をして完成です。

 

カーボンパーツの補修は誰にでもDIYでできる

というわけで、バキバキに割れたカーボンカウルをなんとか補修することができました。


ベースのカーボンクロスも一部破断していたのでその箇所はちょっと傷が残ったけど、この程度まで補修できたら全然満足。我ながら綺麗に補修できたと自画自賛しています。

 

少し離れれば全然分からないよ!

さてこのカーボンパーツの補修ですが、わたしは削り作業は#240→#400→#800→#1000→#1500の耐水ペーパーで水研ぎを行い、その後は自動車用の粗目コンパウンド⇒細目コンパウンドで仕上げています。ポリエステル樹脂も含め、いずれもホームセンターで簡単に入手できるものばかり。そして作業は全て手作業です。つまり、誰にでもできるってことですよ。

ちなみに、カーボンパーツはウェットカーボンと呼ばれるポリエステル樹脂で作られているものと、ごく僅かな熱硬化性樹脂で作られているドライカーボンの2種類に大きく分けることができます。今回のようにDIYで補修ができるのはウェットカーボンだけ。軽量化の効果はドライカーボンの方が圧倒的に優れますが、ウェットカーボンには補修可能で末永く使用できるという大きなメリットがあるのです。

 

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