26インチのオールドマウンテンバイクのフレームオーバーホール【分解編】

 

『バラ完』は自転車を構成する部品を1つづつ自分で選んで組み上げること。

最新のフレームであれば全ての部品を新品で集めることができるんでしょうけど、わたしが欲しいのは今や絶滅危惧種ともいえる26インチのマウンテンバイク。ジャンプ用とかフリーライド系ならまだ新品も手に入るらしいけど、一般的なオールマウンテン系のフレームは新品では見つかりません。なので、自転車本体ともいえるフレームだけはどうしても中古品から探してくる必要があります。

今回入手したゲイリーフィッシャーのCAKE2 GSのフレームは、16年前のものとは思えないくらい状態はいいんですが、それでもやっぱり中古品は中古品。せっかくフレーム単体の状態なんですから、フレームもバラバラに分解して各部をチェック、必要であれば部品の交換や調整をしてやりましょう。今回はそんなフレームのオーバーホール作業のうち、分解作業を紹介します。

 

リアサスペンションの取り外し

フレームを分解するってことで、最初に行うのはサスペンションの取り外し。

このCAKE2のフレームはリンクのない単純な構造なので、ボルト2本を取り外すだけで簡単にサスペンションを取り外すことができます。ボルトの材質はなんでしょう?見栄えが良くて、なんだか高そうなボルトが入っています。ただ、残念ながらボルトには油っ気が全然ありませんでした。それでもボルトには全く摩耗した様子はありません。もしかしてこの車両の走行距離はかなり少なかったのかな?

 

また更に残念なことに、取り付けボルトのうち1か所にはなぜかワッシャーが存在しておらず、そのせいでボルトを抜いた時にフレームの塗装がボロっと取れてしまいました。ボルトのネジ山にはロックタイトが残っていることからも、この部分は多分新車時から分解されていないっぽい感じ。もしそうなら最初から一箇所だけワッシャーが入ってなかったってこと?バイクのようにパーツリストがないので正解は分かりませんが、塗装を守るためにもワッシャーは入れたいですね。

 

取り外したリアサスペンション。マニトウ SWINGER SPV 3wayというサスペンションがついていました。このサスペンション、ネットで探してもなかなか情報が見つかりません。海外ユーザーさんの数少ない書き込みを信じるのであれば、体重が軽い人向けに調整したモデルなんだとか。確かにこのCAKE2 GSは女性向けモデルですが、ほんとうなのかな?

このマニトウ製のSWINGERはその名のとおり3つの調整ができるっぽいんだけど、その3つがなにか分かりません。多分、エアスプリングの圧力、SPV空気圧、伸び側減衰の3つだとは思うんだけど、そのSPVっていうのがなにかすら分かりません。ネットで見つけたマニュアルを読んでも分かりません。SPVって何の略?自転車業界はやっぱり難解です。

このマニトウ製のSWINGERには4wayと6wayのモデルもあるようなので、多分この3wayは低グレード品なんじゃないでしょうかね。

 

なお、先程からストローク部分に黄色いマスキングテープを貼っているのは、ちゃんとストロークするのか確認したかったから。力いっぱい押し込んでも1mmも動いている気配がなかったので、こうやってマスキングテープを貼ったのちにハンマーで叩いてみました。それでやっと5mmほどストロークしたので、もしかするとめちゃくちゃエアスプリングの圧力が高い状態なのかもしれません。このサスペンションにはロックアウト機構がついていませんから、エアー圧をめちゃくちゃ強くして疑似的にロックアウト状態にしていたのかも。

 

スイングアーム分解で予想外に苦戦

サスペンションが取り外せたら、お次はスイングアームの分解。スイングアームはピボット一箇所だけでの固定なので、それを緩めるだけで簡単に分解できるはず。そう思っていたんですが、いや実際にそのとおりの構造なんだけど、でも結構苦労させられました。

 

車体左側に六角レンチで緩めることができるボルトがあったので、これを緩めればいいだけ。

なんですが、

ボルトを緩めようと思ったら反対側のこの丸い部品がとも回りして緩めることができません。この丸いパーツがどうやらナットになっているらしく、こいつの緩み止めをしないといけないようです。

わたしはインパクトレンチをもっているので回り止めなんかしなくても速攻で外せると思っていたんですが、この丸い部品とフレームとの間の摩擦力やたらと弱く、インパクトレンチの打撃が加わる前にスルスル回ってしまうのです。インパクトレンチでは全く緩めることができませんでした。

 

あんな丸い部品、どうやって固定しよう?といろいろ探した結果、こういう工具を発見しました。カニ目レンチとかピンレンチっていうらしいです。SST(特殊工具)ではなく、汎用工具でなにかあるんだろうなぁとは思っていたんですが、工具屋さんのストレートで見つけることができました。バイクの整備でもそうなんですが、こういう時はいつもストレート製の工具に助けられている気がします。ありがとう、ストレート!

 

このピンレンチ、要はディスクグラインダーのディスクを固定する工具のお仲間です。ディスクグラインダーに付属する奴は超安っぽいけど、よくみると同じ構造でしょ?その先端のピンが細く、ピンの間隔も多少なら調整できる仕様になったのがこれ。今回ピンの細さが2.8mmのものを購入しましたが、しっかりと固定することができました。

 

スイングアームのピボットシャフトはこういう構造になっていました。赤いロックタイトがしっかり残っているあたり、やはり新車から一回も分解されていないか、それともしっかりとした業者さんが整備した車両のようです。なんとなくですが、感覚的には前者っぽい印象を受けていますが。バイクもそうですが、しっかりした業者さんが分解・組み立てをしたのならば、各部にもっと油っ気がある気がします。メーカー組み立て状態では油っ気が少ないのは、バイクでも車でもあるあるですよね。

 

さて、シャフトも抜けたしあとはスイングアームを外すだけ・・・と思いきや、まさかのスイングアームが全く外れません。どういうこと?

 

なんとまぁ・・・スイングアームの隙間よりもシートポストの方が太いんです。これでは物理的に抜けるわけがありません。

 

ただ、わたしは”アイソレーターの脱着の為にフレームを無理矢理曲げて広げるという整備方法がオフィシャルなバイク”が世の中にあることを知っているので、エイヤッと無理矢理スイングアームを広げて分解しました。

まさかこんなところでエボ系ビューエルで学んだ知識が役立つとは思いませんでした。ビューエルもゲイリーフィッシャーもアメリカの会社ですが、アメリカ人にとってこういう発想は当たり前なのでしょうか?

 

スイングアームピボットのベアリング取り外し

せっかくスイングアームを取り外したんだから、ついでにしたいのはベアリングの状態の確認。

でもこれは見ただけでも状態がよくないのが分かりますね。触ってみると案の定ゴリゴリでした。

 

内径は実測で23.65mmくらい。

 

23mmとか24mmのベアリングプーラーがいいんでしょうけど、残念ながらそんなサイズのプーラーはもっていません。でも、1.5mmくらいまでならサイズ違いのベアリングプーラーを挿入することは可能です。そんなわけで手持ちの25mmのプーラーをなんとか挿入。

 

スライドハンマーでガツンとやれば、いとも簡単に抜けました。感覚的にですが、嵌め合い寸法がかなり緩そうです。こんな緩さでディスタンスカラーの調整とかできるのかな?って素人ながら不安になるレベル。きつすぎても繊細なアルミフレームを曲げてしまいそうで怖いですが、それにしても、緩い。

 

先程のは車体左側だったので、今度は車体右側を取り外し。

車体右側はチェーンリングがある関係上、このベアリングが収まっている部分の寸法は左側より短いのですが、それなのにベアリングがダブルで入っていました。ダブルで入れるなら寸法の長い左側の方なんじゃないかと素人目線では思いますが、それだけチェーンリング側の方が力が掛かるってことなんでしょうかね。

 

分解したベアリングとディスタンスカラー。ご覧のとおり錆び錆びです。ディスタンスカラーは洗浄して再利用するしかないけど、ベアリングは問答無用で交換ですね。

 

ベアリングのシールに記載されてたのはENDUROという文字。恐らくはメーカー名。

うーん、わたしはこのようなメーカーは知らなかったのですが、調べてみるとこのメーカーの同じベアリングがめちゃくちゃ高くてびっくりしました。ベアリングなんて規格品なんだから、わたしがいつもお世話になっている安心と信頼のNTN製に置き換えましょう。

 

フレームの分解完了

というわけで、予想とは裏腹にスイングアームの分解で手こずったものの、無事フレームをバラバラにすることができました。完全にバラバラにすることができたんですから、各パーツの掃除と補修と隅々まで行うことができますね。とくに、ダメージが集中しているスイングアームは塗装のタッチアップやカーボンの補修など、しっかりやろうとすればそれなりのお時間がかかりそうです。

次回はそれらフレームの補修作業をご紹介したいと思います。

 

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